赤い酔星 通常の3倍酔っ払いながらのウイスキー&テツ旅ルポ

鉄道旅とウイスキーあっての楽しく豊かな人生であります。。

コスモス 使用レポート

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先週末の Bar show 2014 でいちばん期待したのが
ウイスキーワールド誌でテイスターを務める吉村宗之氏が開発した
新しいテイスティンググラス、その名も ” コスモス ”。
じつは私的にモルトを飲みはじめてからテイスティンググラスには不満があった。
日本酒でもワインでもテイスティングに適したグラスはあまたあるのに
モルトでは一般的に4~5種類しかない。
しかもどれも飲み口のガラス厚は極厚でとてもエレガントとはいい難い。
やすいのはいいけど。 そんな中登場したのだから期待が大きいのは当然。
事前に吉村氏本人がFB上で私たちとやりとりをしてくれたのも
氏の本気が窺い知れるというものである。

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わたしが普段使っているグレンケアン(左)との比較
香気を貯めるチャンバー部が大きく膨れ
より大きな空間を持つことで多くの香気を貯められそうだ

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飲み口のガラス厚の比較
見た目はグレンケアンの 2/3 程度に見える


具体的な比較だがまずはそれぞれのテイスティングを行ってみた。
比較に使ったウイスキーは響12年。
理由としてはできるだけ複雑なほうが比較がしやすいこと。
また、山崎蒸留所で構成原酒を5種類試飲しているので
取るべき香味がある程度は予測できていることによる。

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比較方法として、まず頭に浮かぶのは同時に2種を比べながら、となるが
時間をかけてしまえばグレーンのニュアンスが高くなるブレンデッドなので
先によく知っているグレンケアン、あとからコスモスとした。

グレンケアンによるテイスティングノート
外観 
濃いゴールド とてもよい粘性 美しいレッグ 輝きはふつう
香り
立ちはとてもよい 鋭くフルーティー パイン パパイヤ 溶剤 カスタードクリーム
奥から べっこう飴 レモンシロップ
味わい
アタックで甘さが先にたつ べっこう飴 ピートのニュアンス(黒土)
後半で樽のスパイシーさ 
余韻 
甘くほんのり パインのニュアンス

コスモスによるテイスティングノート
外観
濃いゴールドから琥珀 美しいレッグ 輝きはふつう
香り
立ちはふつう~よい ほんのりフルーティー 熟したバナナ パイン グアバ 溶剤
奥からカスタードクリーム スコッチケーキ レモンシロップ 砂糖がけのグレープフルーツ
チャンバーに手をかけてピートのニュアンスの立ち 皮、ベーコン
味わい
アタックはほんのり甘い 熟したバナナ
後半でパインキャンデー 溶剤 樽からのスパイシー
余韻 
甘くほんのり パインのニュアンス


意外だったのは予想していた相違点がまったく逆だったこと。
その大きなチャンバー部分から強い香りが得られると思っていましたが
結果はその逆でグレンケアンのほうがコントラストの強い明確な香り。
対してコスモスはほんのりとした香気を感じるものの
その中からはグラデーション豊富でより種類の多い香気を感じます。
たとえるならシャープなデジタルフォトのようなグレンケアン、
グラデーション豊かで表現力の高い銀鉛写真のようなコスモス、
といったところでしょうか。。
また、チャンバーの断面積が広いことから空気に触れる面も大きく
そのことから香味が開く時間が早いのもコスモスに軍パイ。

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また、コスモスの利点としてこの持ち方を Bar show 会場で
吉村氏に直接指導していただいたのですが、手のひらで保持し
体温を積極的にウイスキーに伝えることでより多くの香味を得られます。
これは味わいを楽しむという点でいえば自分的には好ましくないのですが
ストイックにテイスティングするという観点でいえば新しい側面ともいえ
実際、構成原酒中のスモーキー原酒のニュアンスを取ることができました。
多角的にウイスキーを評価するという意味では面白いと思います。

味わいはグラスが違っても変わらないだろうと思っていましたが
そうでもありませんでした。これはおそらくガラス厚の違いから
液体を口に入れる角度の違いからくるものなのかと思いますが
コスモスでは水平に近い状態で口に入るのでまず舌先が液体に触れる。
結果、舌先でアタックを感じ、それから真ん中、後半、と順序よく評価できる。
対してグレンケアンではそのガラスの厚さから
わりと急角度に倒してから液体を口に入れることになり
アタックでいきなり舌の真ん中あたりまで液体が広がり
アタックから真ん中の味わいが混ざってしまう傾向があると思います。
(あくまで比較すればのはなしですが)
このことも香りと同じようにコスモスはマイルドにほんのり広がる、
という印象を強調していることになるのではないでしょうか。

注意点としては外観から色の評価ですが
チャンバー部を真横から見た場合、その厚みが大きいことから
いままでより色が濃く見える傾向があると思います。
コスモスでは広いチャンバー部のどのあたりに液体がいるかで見え方が違うので
どのくらいの傾けかたで評価するのかを自分なりに決める必要がある。
私的にはハーフの量なら垂直からほんのすこしだけ傾けたときの
液体の色合いがグレンケアンをふつうに傾けたときと同じに見えるので
ここを基準に取ろうと思います。

結論として香味がグッと前にでてくるグレンケアンは初心者向き。
香味がわかりやすいという点では利点があると思います。
対してコスモスではより緩やかなグラデーション的に香りが広がり
香味がわかりにくいかもしれませんがより多くの種類を感じられると思います。
名前のとおり大きな広がりを持ったグラスといえるでしょう。
いずれにしろ、テイスティングという行為は基準をひとつにしないと
なかなか難しいことになりかねないので当面はこの二つを平行して使い
グレンケアンではこう、コスモスではこう、と書いていければ
より多角的にウイスキーを理解できるようになると思いました。

吉村さん、いかがでしょうか?


















後日注

フェイスブックのほうにこの記事について吉村さんからコメントをいただきましたので転記します。

 「 酔星さん、詳細なレポートをありがとうございました。大変うれしく思います。
    グレンケアンがデジタルで、コスモスがアナログという表現は興味深いです。 」