右 今回のテーマとなった
NewCamerモルト
前回、前々回に引き続き今年からはテーマの事前発表ナシ。
そのうえ完全ブラインド状態でのテイスティングとなり
受講生にはかなりのプレッシャーのあるテイスティング会です。
そのせいなのか昨年までのようなプロと一般愛好家が入り混じっての
和気藹々とした雰囲気は回を重ねるごとになくなっていき
気が付けば私以外はみんなバーテンダー、バーのオーナー、インポーターと
いよいよレベルが高くなってきました。
そんな中でおこなわれた今回のテーマは ” New Camer ”
5つのサンプルのうち4つは世界五大ウイスキー以外の
いわゆるニューワールド系ウイスキーとなり
一般愛好家はもちろんのこと、プロでもほとんど飲んだことのないものが多く
それだけ戸惑いもありましたが同時に貴重な経験にもなりました。
全てに共通していえるのは意識してフルーティー系の香味をつけようとしています。
講師の谷嶋氏いわく、そのための手法としては蒸留時のミドルカットにあたり
前留の幅を比較的多く取ることが考えられるとのこと。
が、あまりあからさまにそれを行うと熟成後に化学的なフルーティーさになりやすい。
これはわかりやすくいうとキルシュやポアール、グラッパといった
いわゆる透明なフルーツブランデーと共通する香味です。
が、これをやると金属っぽさ、インクっぽさ、ペンキっぽさも
同時に出てしまうことが多くある。
ブランデーは前留を全て取るので当然、似たような傾向になるわけです。
なるほど、これで12月の回にはウイスキーを離れ、
わざわざブランデーのテイスティング会を開催した理由がわかりました。
①の最近話題になっているKAVALANについては
4つのニューワールド系の中では最も完成度が高いくバランスもまともです。
ここは資本力もあり、よい樽を多数持ち、またそれを使いこなしているということで
一瞬、響あたりを思わせるキレイな造りのサントリーのような方向性があります。
が、現在流通している初期のモルトはまだ生産量が少なかったのでコストが高く
結果、価格が高くついているのが難点ともいえます。
②のセントジョージについては最近相次いで立ち上がっている
そのためか燻製香のあるピートのニュアンスを持ち
周辺は有数の穀倉地帯ということの表現であるのか
田舎くさい、モルティーな方向性のようにカンジました。
③のマクミラはスエーデンのもの。
ここは北欧ということもあり気温の低い中では熟成も当然ゆっくりになるため
それを補うために造りで香味をつけようという意図がわかる。
最もニューワールド系らしい、人工的フルーティー、金属っぽいニュアンス、
になっています。気温が低いため熟成が極めて遅く、樽熟成の北限ともいわれ
対策として30~50Lという樽で接触面積を広く取るなど
いろいろ苦労をしてモルトを造っている蔵のようです。
④のアムルットは世界最大のウイスキー消費国であるインド産。
ここはなかなか微妙な製品も多くある国のようですがこれはなかなかまとも。
熟成年表示もありませんがニューポットのニュアンスもなく
たしかにフルーツブランデーっぽい香味も多くありますが
そうなりすぎないように寸前でコントロールしようという意図も感じられ
厚みのある甘みや樽由来のバニリンもしっかりカンジ取れます。
全体的にトロピカルフルーツテイストで満たされていて
比較対照として付け加えたという意味合いと共に
リリース先のエイコーンさんの方が受講生にいたサービス?もあったのかな 笑
そこには意図的につけた化学的な雰囲気は微塵もなく
とても透明感のある自然な果実のテイストがあり
しっかりミドルカットをされたモルトはやはり違うなと思わせるものがありました。
谷嶋氏をして、” そろそろ造りの方向性が定まってきた ”
ということでの初登場です。
今回の感想ですが、講師の谷嶋氏もいっていたのですが
とにかく5種類飲むのが疲れる会でした、悪く言えば悪酔いに近い状態。
日本酒の世界では悪酔いする酒は本来入っていてはいけないもの、
米の芯でない部分や添加剤が多く入っている酒というのが常識。
ウイスキーも本来カットしなければならない部分のスピリッツが多いと
やはり悪酔いに近い状態になるという部分では共通するようですね。